2016.07.14
子ども達の孤食・貧困に支援の手~学校で朝食提供や、「こども食堂」の運営が広がっています~
日本では、世界でもめずらしい「食」に関する法律「食育基本法」が施行されており、家庭・学校・保育所・地域などを中心に国民運動として、「食育」の推進に向けての取組が実践されています。
子ども達にとって、食べることはからだをつくるために栄養をとることだけではなく、会話をしながら楽しく食べることで、「食」のたいせつな意味を知り、「食」を通して生涯に亘り心身ともに健康な生活を送るための基本となる「生きる力」を育むためにとても重要な意味を持ちます。
しかし、経済的に厳しい家庭や、ひとり親で食事の支度がままならない家庭、共働きで親の帰りが遅い家庭の子ども達は、満足に朝食・夕食を食べることが出来なかったり、1人で食事をする孤食の子ども達が多くいます。
【社会福祉法人グロー ながはま こども食堂(滋賀県長浜市)】
このような昨今の社会的な状況から、様々な事情を抱えた子ども達に無料や低価格で食事を提供したり、学校で朝食を提供したり、また地域の子ども達に夕食を提供する「こども食堂」の運営が広がっています。
では、その取組の一部をご紹介します。
1.高知市立第四小学校 「お話モーニング」
2014年12月から月1回、会話をしながら朝食をとる楽しさを知ってほしいと、参加費120円で、みそ汁とご飯を提供する。調理や後片付けは、ボランティアの学生や近くの住民の協力を得ている。
2.福岡県内公立中学校 パンやバナナ週2回提供
2015年度から、朝ごはんを食べていない生徒に、きちんと朝食を取ってほしいという願いから、週2回、希望する生徒にパンやバナナなどを提供する。食品廃棄を減らす活動をするフードバンクなどから食品を調達している。
3.東京都練馬区 「ダイコンこども食堂」
2015年10月から、月に2回夕食を提供する。親子連れが気軽に立ち寄れる地域の居場所として定着させ、貧困家庭を支援した思いから、練馬区の飲食店経営者が運営する。食材の大半は農家や個人から無料で分けてもらい、ボランティアが調理する。大人は一食300円、子どもは無料。子どもだけで立ちよることもできる。
4.福井県あわら市 「こども食堂まる」
食育活動に取り組む管理栄養士2名が、あわら敬愛こども園の園長に相談して実現。
愛情のこもった食事を通じて、生きる力を子ども達に身に付けてほしいという思いから、あわら市内の民間こども園10施設が協力し、資金や人手を出し合う。18歳以下の子どもとその保護者を対象に、月2回夕食を300円で提供する。食育の一環として子ども達に準備などを手伝ってもらったり、子ども同士の触れ合いの場も設ける。
5.滋賀県「滋賀の縁(えにし)創造実践センター」リーディングプロジェクト「遊べる・学べる淡海子ども食堂」
子どもが安心できる大人と出会い、おなかいっぱいご飯を食べて、宿題をしたり、遊んだり、安心して過ごせる地域の居場所「遊べる・学べる淡海子ども食堂」が、社会福祉法人や学区社会福祉協議会、まちづくり協議会、自治会、ボランティアグループ、NPO法人、企業などが主体となり、現在県内26か所に広がっている。
【栗東市社協 ゆうあい子どもカレー★食堂(滋賀県栗東市)】
地域のなかでは見えにくい「子どもの貧困」をみんなの問題として考えられる地域、さびしさやしんどさを抱える人を見逃さず、さびしさやしんどさを笑顔に変え、笑顔を育む地域をつくっていくことを目的として実施している。
【任意団体 わっか 子ども食堂(滋賀県米原市)】
2012年の厚生労働省調査では、子どもの約6人に1人が貧困状態に陥っている現状を踏まえ、これは家庭の役割、学校はここまでと線引きしたところで、子ども達を取り巻く家庭の事情は変わりません。
福祉施設や集会所などを会場に、手作りの食事を提供し、満足に食事を食べられない子どもをなくしたい、みんなで会話をしながら温かい食事をとる楽しさを知り、おなかだけでは無く心も満たせる子ども達の居場所を作りたいというボランティア活動に賛同者が増え、「こども食堂」はじめ様々な取り組みが、全国に広がってきています。
経済的に困難な状況の子どもだけではなく、さまざまな親子を地域ぐるみで支援する場は、社会的にも大きな役割を果たしており、食材確保や資金面の安定などまだまだ課題を多く含む活動ですが、今後更なる普及が望まれます。