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「GIGAスクール構想」実現に向けICT教育の活用 自治体 整備急ぐ

新型コロナウイルス(以下 新型コロナ)の感染の拡大を機に、日本政府の「GIGAスクール構想」(※1)が前倒しとなり、児童生徒1人1台の端末を整備する等の2020年度補正予算案が、4月7日の臨時閣議で了承されました。

今後さらに新型コロナの感染が拡大し、今春のように学校が休業となれば、「子供たちの学びを保障」するためにも、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン教育は欠かせないため、各自治体は環境整備の前倒し実施を進めています。以下に首都圏の自治体の取組を、紹介いたします。

●東京都三鷹市

新型コロナによる次の休業に備え、三鷹市内の全小中学校でテレビ会議による授業の実現を目指している。テレビ会議だけでなくオンデマンド授業の導入も進める方針で、全ての教員自身が先ず慣れることを目的とし、市内の教員約600人全員に2本ずつ映像制作を義務付ける。

三鷹市は小中学校に無線LANを設置済みのため、学校では無線LANに接続し、家庭では携帯電話回線に接続して使用できるLTEタブレットを導入する方針。

●東京都稲城市

稲城市の小中学校は無線LANが未整備のため、学校や家庭で同じように使用できる携帯電話の通信回線を利用するLTEタブレットの採用を検討している。回線利用料は、市で負担する。

●東京都町田市

町田市は遠隔教育試行のため、一部先行してLTEタブレットを小中学校に配備していた。2019年11月に町田市立堺中学校でLTEタブレットを全校で使用する公開授業を実施した際、電波利用の集中が原因で、なかなか接続できない端末もあった。その経験から「恒久的な仕組みとしては、家庭でも無線LANの方がいい」と判断し、ネット環境がない家庭には市が工事費を負担し、無線LANを整備する方向で検討している。

●東京多摩市

多摩市立多摩中学校は5月以降、若手の教員が中心になり、字幕やアニメを交えて500本弱の動画を制作し、学習支援システムとして生徒に提供している。また市外の教員も含め既に、制作方法の研修会を3回実施。

●東京都世田谷区

教員が制作した動画をYouTube「せたがやまなびチャンネル」で常時40本公開し、誰でも見ることができる。また、授業動画「せたがやスタディTV」は限定公開で配信している。子どもの集中力を踏まえ、動画は5~15分で制作。

●埼玉県さいたま市

さいたま市は、通信環境や情報管理などに詳しい専門人材を採用し、早ければこの9月から4名が勤務予定。児童や生徒が適切に端末を使用できるようにアドバイスする他、端末紛失時の情報流出・危険なサイトへのアクセス防止等のセキュリティー対策についても助言する。

●千葉県千葉市

千葉市は小学校の通信環境向上に向け、楽天モバイルと共同で学校敷地内に基地局を設置する協定を結んだ。基地局設置場所を提供し、次世代通信規格「5G」を活用した学習ソフトや遠隔授業実施に向け、楽天モバイルと市が協力する。

●千葉県柏市

いざという時に使えるように、普段から生徒にテレビ会議の操作に慣れてもらうため、6月から市内の中学校の道徳の授業で、パソコンを使いながら生徒同士が意見交換をする授業を実施。

●神奈川県小田原市

小田原市教育委員会は、新型コロナで休業するなか、児童の自宅学習に役立ててもらう狙いでYouTubeに小学生向けの「おだわらっ子チャンネル」を開設した。学校再開後も新作動画を作り、現在も約90本を公開している。総視聴回数は5万回を超えている。

●神奈川県横浜市

小学校などにiPad、中学校などにGoogleのChromebookを選定。通信環境が整っていない家庭のため、就学援助世帯など対象にモバイルルーター4千台を確保し、8月中に各学校に納入を完了した。

●神奈川県相模原市

相模原市は9月、Googleの協力を得て、機器の操作方法を習熟するため、専門家を講師にした教員向けのオンライン研修を開始する。今後は、授業方法の研修なども検討している。

「通信が繋がらず教員の話が聞けない」といった設備の不具合は、学習機会の不公平にもなり、ICT教育活用に向け、各自治体は情報通信機器導入やインターネット環境の最適化などハード面の整備を急ぐ中、教材開発や指導法など教員への研修も重要課題となっています。

しかしその一方で、新型コロナによる一斉臨時休業中のオンライン授業に、不登校の生徒が自宅から参加するなど想定していなかった効果も得られ、さらに入院中の生徒の参加も見込めるため、学習機会の平等・多様化といった「子ども達の学びの保障」を守るための大きなチャンスとも言えます。

2000年代前半は日本の学校のコンピューター整備状況は、経済協力開発機構OECD(※2)加盟国と大差はなかったのですが、2009年には授業中のデジタル機器の利用状況がOECD加盟国で最低水準となり、2018年度も同様で「日本の学校のオンライン教育は世界から20年近く遅れている」と言われています。

この新型コロナを機に、学校に限らず日本全体の変革が求められています。

※1:文部科学省「GIGAスクール構想の実現について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

※2:外務省 経済協力開発機構OECDの概要
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oecd/gaiyo.html