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「第74回全国学校給食研究協議大会」東京都渋谷区で開催!

2023年10月19日、20日の両日「第74回全国学校給食研究協議大会」が東京都渋谷区で開催されました。

栄養教諭・学校栄養職員を中心に、全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり全体会・分科会が以下の内容で行われました。

1.大会概要

1)趣旨
学校における食育を推進する上で重要な役割を担う学校給食の在り方について研究協議を行い、併せて学校給食関係者の資質の向上を図る。
2)主題
子どもの心と体を健やかに育むための学校における食育の在り方
~ 組織で取り組む学校給食を活かした食に関する指導の充実 ~
3)主催
文部科学省、一般社団法人全国学校給食推進連合会、公益社団法人全国学校栄養士協議会
4)開催日
2023年10月19日(木)・20日(金)
5)開催地
東京都渋谷区
6)会場
国立オリンピック記念青少年総合センター

2.全体会概要

1)開会式
2)「文部科学大臣表彰」表彰式・受賞者記念撮影

【文部科学大臣表彰 受賞者記念撮影】

3)行政説明
4) シンポジウム
・テーマ:子どもの心身を健やかに育むための組織の在り方 
~ 学校、行政が目指すべき食育の充実に向けた取組 ~
・コーディネーター
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 食育調査官/山上望
・シンポジスト
神奈川工科大学管理栄養学科 教授/饗場直美
静岡県袋井市教育委員会おいしい給食課 係長/石塚浩司
神奈川県横須賀市立坂本中学校 校長/前島光
福島県二本松市立安達中学校 栄養教諭/武藤真紀
文部科学省初等中等教育局 健康教育・食育課 学校給食調査官/齊藤るみ

3.分科会

1)開催日
2023年10月20日(金)
2)各分科会と研究主題
(1)第1分科会 研究主題
学校給食を活用し教職員が連携した小学校における食育
(2)第2分科会 研究主題
学校給食を活用し教職員が連携した中学校にける食育
(3)第3分科会 研究主題
特別支援学校における教職員が連携した学校給食の提供及び食に関する指導
(4)第4分科会 研究主題
学校経営に食育を位置付け栄養教諭を中心として推進するための方策
(5)第5分科会 研究主題
社会的課題に対応した学校給食の充実
(6)第6分科会 研究主題
組織的に食物アレルギーに対応した学校給食の提供及び個別的な相談指導の在り方
(7)第7分科会 研究主題
学校給食の調理の工夫及び栄養管理の在り方
(8)第8分科会 研究主題
安全・安心な食品選定及び衛生管理や緊急時対応の在り方

4.大会参加者のまとめ

全体会・分科会に参加しました。2日間にわたり活発な討議が行われました。その内容を以下の通りご報告いたします。

【全体会】

シンポジウムでは、今大会の主題「子どもの心身を健やかに育むための組織の在り方~学校、行政が目指すべき食育の充実に向けた取組~」を基に、全国学校栄養士協議会に所属する栄養教諭を対象に、2023年5月に実施された「食に関する指導についての実態調査」(有効回答数2,973人)の設問①「校内推進体制の整備について」、設問②「給食指導の実施状況について」、設問③「個別的な相談指導の実施状況について」に対する結果をもとに討議が行われ、「食に関する指導の課題」は下記3点に総括されました。
・学校としての取組が十分でない
・食に関する指導の実施状況が二極化している
・栄養教諭の職務等についての認識が低い

子どもの心身を健やかに育むための組織の在り方として大切なことは、「人と人をいかに連携させ、繋げていくか」「栄養教諭・学校長(管理職)・教育委員会等(行政)が食育の充実に向けた共通認識をつなげていくこと」であり、「栄養教諭の求められる役割の明確化」の重要性があげられました。

【全大会の様子】

福島県二本松市立安達中学校 栄養教諭 武藤真紀先生からは、「栄養教諭自身が栄養教諭の職務や食育の必要性等を理解し、周りに広げることで周囲の方たちの理解を得られチームの意思統一になる。」とのご発言や、神奈川工科大学管理栄養学科 饗場直美教授からは、「周りを説得し動かすためには、熱意だけでなく裏付けのあるエビデンスによる説明を行い、理解を得ることが栄養教諭の武器になる。」と力強く熱い激励のお言葉がありました。

【第7分科会 学校給食の調理の工夫及び栄養管理の在り方】

①大量調理に対応した調理の工夫の在り方、②学校給食摂取基準や児童生徒の実態を踏まえ教職員が連携した栄養管理の在り方、③学校給食をモデルとした家庭や地域との連携による食に関する自己管理能力の育成の在り方の3つの協議内容について、下記研究発表の報告と協議が行われました。

1)岩手県宮古市山口小学校(宮古市立学校新里給食センター) 発表事例
主題:バランスの良い食事を整え、自ら実践できる子供の育成
2)岐阜県岐阜市立藍川小学校 発表事例
主題:主体的に望ましい食生活を実践できる生徒の育成
3)愛知県江南市立古地野西小学校 発表事例
主題:生きた教材としての学校給食の改善と自分の健康を考えた食生活を実践できる児童の育成

3件の研究発表では、栄養教諭の「食に関する指導」により、生徒自身が自分で調べ、考えるという活動体験が、生徒の自主的な実践や結果につながったという意義深い報告でした。また、研究取組の中で、調理員や教員から提案や主体的な協力を得られたことが大きく、そこに至るまでの栄養教諭が積極的にコミュニケーションを取られていた様子についての報告もありました。

あらためてこの報告事例は、まさに全体会のシンポジウムで武藤真紀先生が仰っていた「栄養教諭自身が栄養教諭の職務や食育の必要性等を理解し、周りに広げることで周囲の方たちの理解を得られ、チームの意思統一になる」が具現化された内容と重なり、学習が深まりました。

そして、児童生徒が食に興味を持ち、自分にとっての必要な食事を考え、心身健やかな生活のため自ら実践する力を得るためには、栄養教諭の「食に関する指導」がとても重要であることを改めて実感しました。2日間参加する中で、移動手段がなく学校に赴けない、ICTをしたくてもネット環境が整っていないことや、栄養教諭へのデバイスの支給がない現状も複数件、聴聞しました。多くの子どもが、栄養教諭による「食に関する指導」を平等に受けることのできる環境が広範囲に充実することを切に願います。

岩倉綾子 記