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『第2回 栄養教諭食育研究大会』岐阜県多治見市で開催!~エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して~

岐阜県多治見市において、『エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して』と題し、「食育推進」のキーマンとして将来に亘って重要な役割を担っている栄養教諭の資質向上をめざし「第2回 栄養教諭食育研究大会」が、本年も以下の内容で開催されました。

専門学者による講演や、全国各地の栄養教諭チームによる「生きた教材」である学校給食を活用した取組の発表が行われ、学校における食育を更に推進していくために、有意義な討議が繰り広げられました。

【大会開会式の様子】

1.大会概要

(1)主題
「エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して」
(2)開催日
平成30年8月17日(金)9:30~16:30
(3)開催場所
岐阜県多治見市「バロー文化ホール」
(4)講演・発表内容
①基調講演
「米は肥満の原因になるか」
十文字学園女子大学 アジアの栄養・食文化研究所 教授 山本 茂先生
②特別講演
・「失われた命と、これから生きる子どもたちのために」
アレルギー事故で亡くなった児童のご家族
・「新学習指導要領を踏まえた食育進の在り方」
国立教育政策研究所 教育課程研究センター 教育課程調査官 横嶋剛先生
③研究発表
福島県「学校給食に含まれる食塩量の推移」
富山県「平成17年度と26年度における学校給食の食品群別出現頻度と献立内容の変化」
岐阜県「学校給食の献立は改善されてきたが献立を活用した食の指導は不十分である」
滋賀県「スチームコンベクションオーブンと真空冷却機の導入による献立内容の変化」
広島県「伝統食材に視点をおいた学校給食の献立作成の工夫」
香川県「香川県における栄養教諭制度前後の学校給食献立の変化」
鹿児島県「年間を通した学校給食献立の内容分析と教科等や食に関する指導との関連について」
④ポスター発表
・「日本の学校給食における食に関する指導の介入研究の動向」
・「食事バランスガイドの献立作成への活用について-献立作成後のアンケートを中心に-」
・「短期大学生における食生活縦断調査に関する研究」
・「地場産物活用による和食給食の推進について」
・「食物アレルギーの児童生徒および園児をもつ保護者への支援ニーズに関する研究」
・「米粉の焼き菓子への活用と開発」
・「若年期女子陸上選手の骨密度に及ぼす身体状況と栄養摂取状況の検討」
・「給食センターにおける作業時間について」

2.大会に参加して

第一回大会に続き、日本一暑い町多治見市で開催された第二回大会は、都道府県の枠を越え共通の課題に向けた研究内容の発表、各地域での先進的な取組の情報交換が行われ、たいへん意義のある大会となりました。

十文字学園女子大学 アジアの栄養・食文化研究所 山本 茂教授の基調講演「米は肥満の原因になるか」では、米は多くのアジア人の主食であり、東南アジアでは子どもの肥満が増えている昨今、白米が肥満や2型糖尿病の原因であると主張する多くの報告があるが、世界の中でも米をよく食べる日本では、他国と比べ肥満が少ない等のデータに基づき、肥満や糖尿病は米のみに起因するのではないという見解を述べられました。また、米国の新聞ワシントンポスト2013年1月の記事では、日本の肥満管理の成功は学校給食によるものであると報告されている、とのお話もありました。(詳細は、当見聞 録2013年2月22日記事 をご参照下さい)

アレルギー事故で亡くなった児童の保護者の方からは「学校におけるアレルギー対応の情報共有の重要性や、小さな事故を減らすことで大きな事故を減らすことができること。」など、穏やかな口調で、重いテーマのお話がたくさんあり、とても意義深い内容の講演でした。

午後の研究発表では過去10年間のデータを基に変化を分析し、エビデンスに基づいた研究が多数あり、今後の学校給食の改善・発展につながると期待を抱く下記の発表が行われました。

・福島県:減塩を意識した献立作成をしてきたことで、平成17年度の平均食塩使用量2.90gに対し、平成26年度では2.65gへ食塩使用量の低下したことが確認できた。また、今後パンや麺など主食に含まれる食塩量を考慮し献立作成を行う必要がある。

・富山県:栄養教諭制度策定後の10年間において和食、洋食、中華・韓国料理と料理形態を明確にした献立作成を心掛けていることが示唆された。また、緑黄色野菜の出現数が、主菜、副菜の料理で増加した。

・岐阜県:生産者、地域、学校での教科や特別活動との連携を持たせた献立を取り入れ、栄養教諭がコーディネーターとなり、連携した食に関する指導取組が増えた一方で、「健康によい食事のとり方」・「食や料理を広く知る」・「食の楽しみを知る」についての指導は増えていなかった。

・滋賀県:栄養教諭制度導入後、スチームコンベクションオ―ブン、真空冷却機など調理機器の整備されるようになって「主食+主菜+副菜2品」の組み合わせの献立割合が増えた。整備されていない調理場においても、栄養教諭が組み合わせ等に配慮しながら献立作成を行っていた。

・広島県:食育推進計画に則り、毎月19日の食育の日を食文化伝承の意義から和風料理を実施する「わ食の日」としている。この取組として伝統食材(大豆、凍り豆腐、切り干し大根、ひじき、おから)を献立に取り入れた結果、大豆、切り干し大根、ひじきの残食率が減少した。伝統食材を使用することにより食物繊維量を増やすことができた。

・香川県:栄養教諭制度導入後、和食および洋食の献立が増加し、和洋折衷の献立が減少した。多くの栄養教諭が文部科学省通達にある献立作成にあたっての配慮事項の「家庭における日常の食生活の指標になるように配慮すること」という内容を意識し、料理の組み合わせを改善した結果だと考えられる。

・鹿児島県:年間の使用食材の産地別割合では11月と1月は地場産物活用割合が高く、その背景には県全体の取組として11月「かごしまの教育」(※1)と1月「鹿児島をまるごと味わう学校給食」(※2)が行われていることが影響していると考えられる。また、11月と1月は教科等と関連付けた献立や食に関する指導が行われている。

※1:鹿児島県教育委員会の主催で、11月1~7日の期間に、地域が育む「かごしまの教育」県民週間として行事が実施されている。
https://www.pref.kagoshima.jp/ba01/kyoiku-bunka/school/shukan/keminkeikaku/kenmin-syukan.html

※2:学校給食記念日の1月24日を含む1週間の中で、「鹿児島県をまるごと味わう学校給食」の行事が実施されている。

最後に神奈川県工科大学 饗場直美教授が研究に対する講評で「今後、食育の推進には減塩を意識した加工食品や、新たな調理機器の開発が大きい影響を与えることとなる。栄養教諭、企業、農林水産省などが一体となり行政の力を借りて食育を進めていく必要がある。これらは栄養教諭に任せられた大きな役割であり本日の発表内容が生きてくる。」と締めくくられました。

閉会に際しては、公益社団法人全国学校栄養士協議会長島美保子会長より、この大会の真摯な取り組み姿勢と一段とレベルの上がった成果に対して、高い評価と共に激励のご挨拶がありました。

多用な業務の中から、栄養教諭・学校栄養職員の方々が熱心に発表される研究大会に参加させて頂き、多くのことを学ばせて頂きました。このような熱い志とお取組が学校における「食育の推進」の原動力となって実績につながり、更に子供たちの心身の健康増進につながっていくことを実感しました。

中野 はるか
上田 知佳 記