2015.08.21
『第56回全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会』徳島県で開催!
徳島県で「第56回全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会」が栄養教諭・学校栄養職員を中心に、全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり、『栄養教諭を中核とした学校における食育の推進』~広げよう!阿波(OUR)の食育 すこやか だんらん 地産地消~を主題として、研究討議が以下の内容で行われました。
1.大会概要
- 主題
『栄養教諭を中核とした学校における食育の推進』
~広げよう!阿波(OUR)の食育 すこやか だんらん 地産地消~ - 趣旨
学校における食育の推進に向けて、児童生徒に対する食に関する指導のあり方や学校給食の充実方策について研究協議し、栄養教諭・学校栄養職員の資質の向上を図る。 - 開催日
平成27年7月29日(水)・30日(木) - 開催場所
全体会・展示・分科会 アスティとくしま(徳島県立産業観光交流センター) - 主催
文部科学省、徳島県教育委員会、徳島市教育委員会、公益社団法人全国学校栄養士協議会、公益財団法人徳島県学校給食会 - 協賛
全国学校給食会連合会
2.全体会概要
- 文部科学省説明
演題:「学校における食育の推進と栄養教諭の役割」
文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長/和田 勝行 - 記念講演
演題:「小さなときから美味しい味を身につけよう」
講師:料理研究家 ファミリークッキングスクール主宰/浜内 千波 - 実践発表
主題:「食育をとおして児童に育てたい力~スーパー食育スクールの取組から~」
発表者:徳島市教育委員会徳島市教育研究所 所長/岡本 弘子
阿波市立林小学校 教諭/日岡 健二
阿波市立市場中学校 栄養教諭/中西 貞美 - 講演
演題:「学校給食における適切な食物アレルギー対応」
講師:国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部 部長/
「学校給食における食物アレルギー対応指針」作成委員会 顧問/海老澤 元宏
3.分科会
- 開催日
平成27年7月30日(木) - 各分科会と研究主題
(1)(2)食に関する指導(単独校、共同調理場)
研究主題 「学校における食育を推進するための食に関する指導はどのようにしたらよいか」
(3)(4)個別指導(食物アレルギー、肥満、痩身傾向、スポーツ)
研究主題 「児童生徒や保護者に対する個別的な相談指導はどのようにしたらよいか」
(5)特別支援学校
研究主題 「障害を有する児童生徒の食に関する指導や個別的な相談指導はどのようにしたらよいか」
(6)学校と家庭・地域の連携推進
研究主題 「学校と家庭・地域との連携を深め、学校における食育を推進するためにはどのようにしたらよいか」
(7)給食管理(栄養管理)
研究主題 「児童生徒の体格及び活動レベル及び地域の実情等に配慮した栄養管理を行うためにはどのようにしたらよいか」
(8)給食管理(衛生管理)
研究主題 「学校給食の衛生管理を徹底するためにはどのようにしたらよいか」
【大会お弁当1日目「阿波のおもてなし弁当」】
【大会お弁当2日目「阿波づくし弁当」】
4.大会参加者のまとめ
広げよう!阿波(OUR)の食育 すこやか、だんらん、地産地消を主題として、徳島県にて全国から集まった先生方によりスーパー食育スクール取組の実践的な発表や、食物アレルギーの対応等について真剣な討議が2日間にわたり行われました。
では初日全体会で行われた、国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部部長 海老澤元宏先生による、たいへんレベルの高い充実した内容の講演「学校における適切な食物アレルギー対応」についてご紹介致します。
学校における食物アレルギーに関する指導については、平成20年に公益財団法人日本学校保健会から「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が発行され、平成25年の食物アレルギー児童が亡くなった悲しい事故のあと、文部科学省で調査研究者協力者会議による「最終報告書」が出され、これを受けて平成27年に文部科学省による「学校給食における食物アレルギー対応指針」が全国配付されました。
上記の流れをふまえて、簡単に講演の内容から3つのポイントによりご紹介します。
- アレルギー疾患の理解と正確な情報の把握・共有
学校における配慮や管理が必要な児童生徒に対しては、保護者の申し出により食物アレルギーの原因物質や対応方法を決めるのではなく、保護者へ医師の診断による学校生活管理指導表の提出を求め、この記載内容に基づいて対応する事が基本である。 - 日常の取組と事故予防
各市区町村教育委員会や市の支援を受けて、その一定の方針をしっかり踏まえ、学校内に食物アレルギー対応委員会の設置をし、全校一体となって組織として対応する。学校生活管理指導表に基づいて対応を行うが、各学校の物理的・人的体制を勘案し、一定方針を踏まえ、各学校の実態に合わせて対応内容を決定する。
最優先を「安全性」とし、完全除去を原則として、提供するかしないかの二者択一を基本とする。 - 緊急時の対応
食物アレルギーを持つ児童の緊急時の対応は、全教職員が情報を共有しチームワークで対応することが重要。適切に研修会を開き、緊急時の対応を実際に体験して、役割分担の内容や救急要請時に伝える事項まで細かく予め決定しておく。
文部科学省から配布されたDVDやエピペンのセットをうまく活用して、実際の緊急時にスムーズに対応できるように研修しておくことが重要。また、普段から医師会・消防署などと情報の共有をしておき、緊急時に備えておく。
2日目(7月30日)の分科会では、8テーマに分かれて研究討議が行われました。
第1分科会「食に関する指導(単独校)」では、研究課題「学校における食育を推進するための食に関する指導はどのようにしたらよいか」について協議されました。栄養教諭が配置されていない学校での食育指導は、近隣の栄養教諭が助け合うのも一つの手段であること、また小中学校9年間の食の指導としては、組織や体制がしっかり機能した上で、各学年ごとにやるべきことを明確にして取組んでいくように、との経験豊かな先生方から助言もありました。
第3分科会「食に関する指導(個別指導)」では、研究課題「食物アレルギーのある児童生徒への指導」について協議されました。「全教職員で対応する校内体制の整備」・「共同調理場方式における食物アレルギー対応」について研究発表がありました。指導助言者の国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部部長 海老澤元宏先生から、アレルギー対応は、学校栄養職員・栄養教諭が一人で抱え込まず、周囲の栄養士や、学校の職員と一緒になって対応することや、指針などを作成する際に一から作ろうとするのではなく、文部科学省が発行しているものや、他の自治体のものを参考にして作成していくようにとお話がありました。
本大会では、近年にない猛暑の下、全国から熱心に参加された方々と共に参加させて頂き、あらためて学校給食の担う役割の大きいことを痛感しました。学校における「食育」、「食物アレルギーへの対応」、「家庭との連携」、「栄養・衛生管理」などを推進するためには「学校全体での取り組みとチームワーク」を大切にして、様々な連携を広く繋げていくことが重要であることも、同様に実感しました。意義ある大会に参加された関係者の方々の熱心な姿勢に接して、さすがの暑さも少し後退したかのように思えました。