2022.04.18
食材価格の上昇を受け 学校給食費 値上げの動きが広がっています
身近な様々な原材料価格の上昇が続き、さらにロシアによるウクライナ侵攻で小麦粉や原油などの価格が一段と上がり円安が進む中、「学校給食」にも大きく影響が出ています。主だった各市区町村の対応をご紹介いたします。
1.群馬県渋川市
令和3年度と令和4年度での給食用食材の状況を調査した結果、パンが約78万円、うどん麺・中華麺は約6万円、牛乳は約146万円、サラダ油は約74万円の増額となっていることが分かった。野菜は使用頻度の高いものを比較すると、2/3程度が値上がりしていた。
そんな中、渋川市は給食費を維持するため、限られた予算の中で栄養バランスに影響のない範囲で食材を変更して必要な栄養を摂取できるよう、生で仕入れていたマッシュルームやコーンなどを冷凍や缶詰などに変更したり、鶏モモ肉の代わりに鶏のむね肉、ひき肉の代わりに大豆を使用するなど安価な食材に変更して購入額を抑えているほか、油の使用量を抑えるため、揚げ物の提供頻度を減らすなどの対応を実施している。
渋川市では、子育て世代の経済的な負担を軽減し、子育て支援の充実を図るため、平成29年度から市立学校の児童及び生徒の学校給食費の全額を支援している。年間の給食提供日を約200日と想定した場合、小学生1人当たりの給食費は年額5万1400円(1食当たり257円)、中学生は5万9000円(同295円)となる。
渋川市は、今後の状況を見極めながら、必要であれば予算の補正などによる対応を検討したいとしている。
2.東京都中央区
牛乳や小麦の単価のほか、各種調味料や流通コストの上昇が継続していて、必要な栄養を維持した状態での給食提供に課題が生じている。
また、野菜や魚などについては、より廉価な食材に変更するなどして、食材購入価格が上がらないよう工夫しているが、必要な栄養を維持し一定レベルを保持した給食提供に支障が出てきている。
新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい社会経済状況を考慮し、激変緩和策として、令和4年度と令和5年度の2年間については、給食費引揚額の1/2相当分を公費補助し、給食費の値上げを実施する。
令和4年度からの1ケ月あたりの学校給食費 保護者支払い額は、小学校低学年で115円値上げし4,025円(令和3年5月1日時点で3,910円)、小学校中学年で125円値上げし4,235円(同時点で4,110円)、小学校高学年で135円値上げし4,465円(同時点で4,330円)、中学生で250円値上げし4,950円(同時点で4,700円)となる。
3.東京都文京区
給食費は平成26年4月に改訂して以来据え置き、食材の変更や献立の工夫、また保護者の負担を極力少なくするため、公費で給食費の補助を行っている。
しかし小麦やパンだけでなく、牛乳や油なども値上げが続き、今まで以上に厳しい状況となることから、令和4年度に給食費検討委員会を設置し、値上げの検討を行う予定。
4.東京都新宿区
学校給食の栄養バランスや質を維持するために、原油価格の上昇に伴い食材料費が高騰していることや、牛乳が段階的に値上げされていることを踏まえ、学校給食費を公費負担で改訂する。
令和4年度から1食当たり公費負担で、小学校低学年は13円、小学校中学年と高学年は12円、中学生は16円を値上げする。
5.東京都墨田区
昨年の令和3年度、摂取すべき栄養量の基準を大幅に満たせていなかった給食はなかったが、学校給食で使用する食材の価格上昇が見込まれるため、値上げを実施する。
令和4年度からの1ケ月あたりの学校給食費 保護者支払い額は、小学校全学年で40円値上げし、小学校低学年で4,230円(令和3年5月1日時点で4,190円)、小学校中学年で4,730円(同時点で4,690円)、小学校高学年で5,280円(同時点で5,240円)、中学生では80円値上げし5,605円(同時点で5,525円)となる。
6.東京都杉並区
食材料費は保護者負担額で賄っているため、小麦や油、牛乳などの食材料価格が上昇したため、値上げを実施する。
令和4年度からの1ケ月あたりの学校給食費 保護者支払い額は、小学校低学年で48円値上げし4,574円(令和3年5月1日時点で4,526円)、小学校中学年で47円値上げし4,911円(同時点で4,864円)、小学校高学年で62円値上げし5,265円(同時点で5,203円)、中学生では73円値上げし5,756円(同時点で5,683円)となる。
7.東京都板橋区
食材費の価格が高騰していることに伴い、令和4年度から給食費の値上げを検討していたが、新型コロナウイルス感染拡大の中、各家庭の負担を増やすことはできないことから、給食費の値上げを断念。
一方、現状の給食費で高騰している食材料を購入していくことになれば、給食会計に支障が生じるため、この課題を解消するために、令和4年度は公費で一部食材料(約1ケ月分の飲用牛乳)を購入し、給食会計の健全化を図りながら、安定的な給食提供を目的として実施するが、この公費負担は永続的な措置ではない。
今後の対応の予定は、麺の献立の日は「蒸し中華麺(生麺)」ではなく「スパゲッティ(乾麺)」を使用する回数を増やすなど、これまで行ってきた工夫をさらに強化するが、保護者負担の給食費の値上げも検討している。
8.東京都葛飾区
野菜類をはじめ、乳製品や小麦・油脂などの食材価格が高騰している。そのため、各学校では低価格の食材を選定するなど、献立作成の内容を工夫するなど対応している。
しかし令和3年度1学期の平均を確認したところ、小学校では「学校給食実施基準」の鉄の摂取量が不足し、中学校では、カルシウム・マグネシウム・鉄がわずかに不足していた。
年々、食材価格が上昇していることで食材の選択が困難になっていることなどから、現在の社会経済状況を踏まえ、学校給食費を公費負担で改訂を実施する。
9.宮﨑県宮崎市
県内の学校給食に使用する食材を供給している県学校給食会によると、およそ2,000品目の食材の内、今月から値上げとなったのは、およそ450品目に上り、値上げ幅は、平均で10%前後。食用油の価格は20%にも上昇している。
宮﨑市高岡学校給食センターでは食材費の上昇を受け、より安い食材の調達や、メニューの工夫などコストを抑える努力を行ってきたが、3年ぶりに1食あたり3円値上げする方針。
宮﨑市によると高岡だけでなく、市内4つの学校給食センターも、令和4年度の給食費を1食あたり3円、年間600円程度値上げする方針。
学校給食現場では、献立内容を検討し、食材を入れ替えたりするなどの対応で、現状の給食費で学校給食を提供できるよう努力していますが、今後も様々な原材料価格の上昇が続く場合には、給食費の値上げについて検討せざるを得ないとしています。
さらに、新型コロナウイルス感染症による経済状況の影響も踏まえて、給食費値上げの時期や公費負担の補助などについては、今後詳細に検討すべき課題としています。