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最新英国レポート!英国の学校給食と子どもの食生活

財団法人学校給食研究改善協会鈴木美保子前評議員からのレポートが届きました。給食改革が開始されてからの英国における給食摂食率など、現状報告です。

1.スクールフード・スタンダードと給食改革
英国における給食改革は、スクールフード・スタンダード(下記※1参照)の策定により、開始された。小学校(5~11歳)では1年経過、中学校(12~16歳)では、2009年9月より実施されているが、2006年の改革以来、給食の質改善は徐々に進んでおり、また各学校・地方自治体も「健康にもよく、美味しい」給食の内容実現に取り組んできた。

これをリード・サポートする形で設立されたスクールフードトラフト (以下SFT、下記※2参照)は、給食改革の本質は、吟味された内容の給食を食べるのか食べないのか、生徒がみずからの自由意志で給食を食べることを選択、そしてその人数を増やすことであった。そしてこの改革を実践するために、給食事業者のコスト負担軽減をはかり、摂食率を2008年までに4%、2009年までに10%上昇達成させるという数値目標を掲げてきたのであるが、過去4年間の給食摂食率年次推移表をみても、その成果は残念ながらまだあまり出ていない。

【改革開始前年度2005年~2009年までの給食摂食率推移】

期 間 小学校(%) 中学校(%)
2005~2006 42.3 42.7
2006~2007 41.3 37.7
2007~2008 43.8 35.5
2008~2009 43.9 36.0

 

上記推移表から摂食率は給食改革開始から小学校では、僅かながら上昇しているが、中学校については、改革前に比べ6.7%も低下という芳しくない結果となっている。

2.なぜ給食摂食率は向上しないのか
「『健康にもよく、美味しい』給食内容となったのに、なぜ摂食率は向上しないのか?」 朝7時のNHKニュース英国版といえるBBCテレビ“Breakfast”で、キャスターがSFTの代表に厳しく質問していたが、給食を食べない子ども達の意見は以下のようなものであった。

【給食を食べない子ども達へのインタビュー】
近くのファーストフード店で、山盛りのポテトフライ(下記※3参照)にケチャップをたっぷりかけて頬張る中学校生達のコメント:

『ヘルシーな食べ物ではないのは分っているけど、美味しいし大好きなんだ!』『チップスは安いからいい』『学校の食堂は混んでいて、並んでいたら時間が無くなるから』

また給食を食べているかどうかには触れずに、好きな食べ物を訊ねてみると、 『ピッツア&チップス』がほとんどで、時々『バーガー&チップス』、

1週間に食べるファーストフードの回数を訊くと、『2・3回かな・・・』と遠慮がちな女子や、元気に『毎日!』と答える男子もいる。

子ども達に定着した揚げ物や肉加工品を減らし、甘いドリンクや菓子パンをなくし、代わりに、野菜がたっぷり添えられた魚のソテーに胚芽パン、牛乳といった内容の給食は、「ピッツァ&チップス」が大好きな子ども達にはなじまないのだ。 イギリスではどこに行っても(高級フランス料理店でさえ)年齢を問わず、紳士淑女もチップスを食べている実態をみれば、子ども達がこうなるのは当然ともいえる。

給食摂食率が向上しないことに対してSFTは、
「目標数値は達成できなかったが、給食の内容は着実に改善され、児童生徒の健康によいメニューに変わりつつある。好ましくない内容の給食摂食率がたとえ100%達成されたとしても、バランスの取れた内容の給食を約40%の児童生徒が食べていることの方が、はるかに意味がある。SFTは、今後も引き続き当改革を推進していく。」と発言している。

※3.英国名物“フィッシュ&チップス”のチップスこそ、このポテトフライであって、ある意味、古き昔から受け継がれてきた英国民的食べ物ともいえる面は否定できない

3.摂食率向上に向けて
先述のTV番組でもプライベートスクールの校長は、「子ども達の食の好みや習慣を変えるということは大変に時間がかかることだ。特に、年齢が高いほど、子ども自身の好みや食習慣が定着してくるので難しく、短期間では不可能」と、長期戦になるとの見方をしている。
大好物ばかりで定着された子ども達の食習慣を改善させるのは容易ではない。
そして、その間にも給食の内容はますます子ども達の嗜好からかけ離れたものになる筈で、これに歯止めをかけ、給食摂食率向上を実現するためには、「子ども達に望ましい食習慣を定着させるべく、行政も社会も一体となって、余程の覚悟と積極策をもって取り組まなければならない」といえる。

財団法人学校給食研究改善協会 前評議員 鈴木美保子記