2015.06.16
減塩社会の実現を目指して~学校でも減塩給食導入、子どもの頃から生活習慣病の予防を意識~
生活習慣病を防ぐ対策として、禁煙の次に重要な取組みは、減塩です。摂り過ぎてしまうと健康に悪い影響を及ぼす塩分は、高血圧を招き、脳卒中など命に関わる病気のリスクを高めてしまいます。
最新の研究では、日本人の塩分摂取量は、まだ世界的にも高いことが分かってきました。実は日本人は、塩分の7割を食塩そのものではなく、調味料を含めた加工食品などから、自身の認識なく摂取してしまっていることが原因といわれています。
イギリスでは、いち早く国を挙げて塩分摂取を減らした結果、高血圧の患者が減少し、医療費も大幅に減らすことに成功しました。
この様な状況の中、今年4月、厚生労働省が健康な人が摂取すべき栄養素の指標「日本人の食事摂取基準」で、1日あたりの塩分摂取目標量を、男性(18歳以上)は9グラムから8グラム、女性(18歳以上)は7.5グラムから7グラムに改定し、日本でも徐々に減塩社会の実現に向けた取組が開始されはじめました。改定を受け、学校給食の現場におきましても、減塩の動きが広まっております。その取組についてご紹介します。
1.広島県呉市 学校給食に減塩目標「少しずつ減らして薄味に慣れよう」
広島県呉市では、2011年度、給食1食当たりの塩分量3.1グラムだったものを、2.3グラムまで下げるという目標を立てた。
目標達成のため加工食品に対し、さまざまな工夫を凝らし、例えば、小分けのマヨネーズを容量の少ない製品に替え、全部食べたとしても0.1グラムの減塩を実施。さらに、ドレッシングやふりかけは加工食品をやめて手作りにすることで塩分を減らす。
こうして毎年0.2グラムずつ塩分を下げることで、子どもたちが給食の味に違和感を持つことなく目標数値に近づけることができた。
子どもたちに、「家のごはんと給食と、どちらの味つけが好き?」と尋ねると、「給食の方が好き」という。「給食でもそんな塩辛くないよと、それで家庭の味も薄くなってくれたら。」と、市の担当者が話している。
2.長野県 学校給食で塩分を減らした「減塩パン」の提供
長野県の調査で、1日の食塩摂取量の平均は県の目標の9グラムを上回っていることから、健康づくりの県民運動「信州ACE(エース)プロジェクト」では、「減塩」を重点項目としている。そのため、長野県学校給食会は、長野県パン商工組合、長野県学校保健会栄養教諭・学校栄養職員部会、県教育委員会と検討し、県内の508校の小中学校や特別支援学校で、今年4月から、学校給食用のパンの塩分を減らした「減塩パン」を提供している。
3.滋賀県草津市 全小学校で塩分を控えめにした給食の提供
草津市ではこれまで、文部科学省が年齢ごとに定めた1食あたりの減塩摂取量に沿って、給食の献立を考えてきた。今年度4月の厚生労働省の塩分摂取目標量の改定を受けて、草津市は給食でも減塩を取組むことを決定。例えば主食と副食、牛乳がそろう完全給食の場合、文部科学省の基準では小学校中学年(3、4年生)で2.5グラム未満だが、草津市では、年間平均で2.2~2.4グラムと厳しい数値を定めた。
市立全13校の児童や教員ら約8,300人分の給食を調理する市学校給食センターでは、野菜の発色を良くするために下ゆで時に使用していた塩を廃止。薄味にしても食べ残しが増えないよう、だし汁を使ったり、ニンニクやネギ、ショウガなどの香味野菜、カレー粉や豆板醤などの香辛料で風味を工夫している。
センターによると、塩分計で4月の給食の塩分量を測定したところ、中学年の塩分量は基準を下回る2.2グラムに収まった。4月のスタート以降、食べ残し量など変わらないという。
同センターは「給食以外に家庭などでも減塩を実施してもらえるよう、保護者にも呼びかけていきたい」と話している。
健康を支えているのは、薬や医療だとつい考えがちですが、それは病気になってからのことです。毎日の食事、一生食べ続ける食事・食品が大事だと、私たちがまず認識し、ゆっくり少しずつ段階的に、組織的に減塩に取組んでいくことが重要です。
また、学校給食を通じて、子どもの頃から薄味に慣れながら育って、生活習慣病の予防を意識し、食べ物本来の味を細やかに味わうことが出来る様になれば、将来に亘るメリットは医療費削減にもつながって、計り知れないものがあります。