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「第69回全国学校給食研究協議大会」兵庫県で開催!

平成30年11月末、兵庫県神戸市に全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実~未来につなごう 食で育む こころ豊かな人~』を主題とし、学校における食育の推進と学校給食の充実を図るため、以下の内容で研究協議が行われました。

分科会では、兵庫県は三つの道(山陽道、山陰道、南海道)、四つの海(日本海、播磨灘、大阪湾、紀伊水道)をもち、五つの国(摂津、播磨、但馬、丹波、淡路)が一つになった地の由来から「ひょうご五国のうまいもん弁当」と称したお弁当が配られました。

【全大会の様子】

【ひょうご五国のうまいもん弁当】

1.大会概要

1)主題
『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実~未来につなごう 食で育む こころ豊かな人~』
2)趣旨
学校における食育を推進する上で重要な役割を担う学校給食の在り方について研究協議を行い、併せて学校給食関係者の資質の向上を図る。
3)開催日
平成30年11月29日(木)・30日(金)
4)開催地
兵庫県神戸市
5)主催
文部科学省、兵庫島県教育委員会、神戸市教育委員会、全国学校給食会連合会、公益財団法人兵庫県体育協会
6)後援
兵庫県小学校長会、兵庫県中学校長会、兵庫県特別支援教育諸学校長会、兵庫県学校栄養士協議会、兵庫県PTA協議会

2.全大会概要

1)開会式
2)「文部科学大臣表彰」表彰式・受賞者記念撮影

【「文部科学大臣表彰」受賞者記念撮影の様子】

3)文部科学省説明
演題:「学校における食育及び学校給食の推進」
文部科学省初等中等教育局 健康教育・食育課 課長 三谷卓也
4)シンポジウム
テーマ:「社会的課題に対応するための学校給食の活用
~「地産地消の推進」と「伝統的食文化の継承」の取組を通して~」
コーディネーター:文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 学校給食調査官 齊藤るみ
シンポジスト:
武庫川女子大学 教授 高橋享子
生産農家 島中佳紀
南あわじ市教育委員会 主幹兼学校教育指導主事 木場直子
芦屋市立山手中学校 主幹教諭(栄養担当) 奥瑞恵
5)特別講演
演題:「生きる力・生き抜く力を食育で」
講師:玉岡かおる氏(作家) 

3.分科会

1)開催日
平成30年11月30日(金)
2)各分科会と研究主題
(1)第1分科会 小学校における学校給食を中心とした食育
研究主題
「学校給食を活用し小学校における食育を推進するための方策」
(2)第2分科会 中学校における学校給食を中心とした食育
研究主題
「学校給食を活用し中学校における食育を推進するための方策」
(3)第3分科会 特別支援学校における学校給食
研究主題
「児童生徒の障害に応じた学校給食の提供及び食に関する指導の進め方」
(4)第4分科会 学校経営における食育
研究主題
「学校経営の中に食育を位置付け栄養教諭を活用しながら食育を推進するための方策」
(5)第5分科会 学校給食における地場産物・国産食材の活用
研究主題
「学校給食において地場産物・国産食材の納入体制の整備及び活用を推進するための方策」
(6)第6分科会 学校給食における食物アレルギー対応
研究主題
「食物アレルギーに対応した学校給食の提供及び個別的な相談指導の在り方」
(7)第7分科会 和食を中心とした献立の提供と栄養管理
研究主題
「和食を中心とした献立作成と児童生徒の実態に応じた栄養管理の在り方」
(8)第8分科会 学校給食における衛生管理及び危機管理
研究主題
「安全かつ安心な食材の選定及び衛生管理や危機管理を徹底するための方策」

4.大会参加者のまとめ

今大会1日目の展示会に出展し、2日目は分科会を受講しました。その内容を以下の通りご報告します。分科会は、いずれの会場においても活発な研究討議が行われました。

【第1分科会 小学校における学校給食を中心とした食育】

①栃木県市貝町立市貝小学校 発表事例
望ましい生活習慣について学ぶよい機会にするため、5年生が毎年行う「小児生活習慣病予防健診」を養護教諭と栄養教諭が連携し、保健指導を実施した。「食事のマナーふりかえりカード」で毎月のマナー目標について自己評価を行い、給食で嫌いなものを食べることができなかったと評価した時は、自分の健康を考えて好き嫌いせずバランスよく食べることの大切さを理解し取り組む等、児童自ら健康課題解決に向けて意欲的に取り組むことができるよう支援している。

②愛知県稲沢市立坂田小学校 発表事例
学級活動や各教科で行った食に関する指導の一例として、総合的な学習の時間に3年生は大豆の栽培、4年生は外部講師指導による味噌作り、5年生は味噌汁作りと栽培から食べるまでを学ぶことで、食物のはたらきを理解し、バランスのよい食事がなぜ重要なのかを理解することにつながった。高学年においては、バランスのとれた栄養を意識して食事を摂ることが、自立した食生活を促し、将来自らの健康管理を行うために役立って、大切な知識となることが期待できる。

③兵庫県神戸市立なぎさ小学校 発表事例
食に関する指導の充実を図るため、学級担任と栄養教諭が連携し、全学年で三点支持箸や豆つかみキットを使用した指導を実施した後、学校独自の検定を行っている。課題をクリアすると「おはしマイスター」「おはしグランドマイスター」の称号を得ることができ、楽しみながら目標をもって活動ができるように工夫した。

①②③の取組事例の他にも、全国の学校や給食センターの食育推進体制について発表がありました。これらの発表後、共栄大学教育学部 客員教授の今村先生より、「学校の規模や状況により食育推進体制は様々であるが、できることから始めること、食育はまず楽しく、難しくなりすぎないよう進めること」との指導助言がありました。最後に「栄養職員、栄養教諭は児童、教職員、保護者、地域をつなぐコーディネーターの役割を担っていく」と講義が締めくくられました。

本分科会を受講して、食に関する指導は、栄養教諭が単独で取り組むものではなく、自らがコーディネーターとして全教職員、保護者、地域全体と連携し、一体となって取り組んでいかねばならないという熱い思いを改めて実感しました。今後もこのような研究討議の場で発信された画期的な取組が全国へ広がっていけば、子ども達が生きるための力を身に付けることにつながっていくのではないかと、思いました。

【第6分科会 食物アレルギーに対応した学校給食の提供および個別的な相談指導の在り方】

①神奈川県大和市立北大和小学校 発表事例
・文部科学省が作成した「学校給食における食物アレルギー対応指針」をうけ、「大和市学校給食における食物アレルギー-対応の手引き」を平成27年4月に改定。市のマニュアルが作成されたことにより、大和市各校のアレルギー対応が統一された。
【大和市学校給食における食物アレルギー対応について】
http://www.city.yamato.lg.jp/web/hoken/hoken01211879.html

・アレルギーの原因食品を提供する日、医師から完全除去を指示されている児童生徒は、家庭からの弁当を持参する。ただし、除去食実施基準に基づき、給食設備や人的環境が十分整っており、安全に給食提供が可能と学校及び教育委員会で判断した場合は、除去食を提供する。

・市教育委員会保健給食課は、平成25年度より市内小学校の教職員を対象に「アナフィラキシー・エピペン研修」を開催し、知識と技術の習得を図っている。

②大分県別府市 発表事例
・大分県版「学校・幼稚園における食物アレルギー対応の手引き」が発行された。
【大分県医師会ホームページ「お知らせ」欄に掲載 『学校・幼稚園における食物アレルギー対応の手引き(大分県版)』】
http://www.oita.med.or.jp/

・除去食対応品目は大分県の手引きに沿って、卵・乳・えび・かに・いか・ごまの6品目とし、それ以外のアレルギー除去対象品目の場合には、家庭からの弁当対応とする。

・校長、教頭、養護教諭、栄養教諭で組織する校内アレルギー検討委員会があり、保護者面談や対応内容の検討・決定を行う。

・一献立に対して複雑なアレルギー除去を行うのではなく、「一献立一対応」とし無理な対応は行わない。「一献立一対応」とは、卵アレルギーのみの児童とえびアレルギーのみの児童がいた場合、卵アレルギーの児童には卵除去・えび入り、えびアレルギーの児童には卵入り・えび除去と複雑に個別の対応をするのではなく、卵もえびも除去した献立の提供を行い、一つの献立より該当するすべてのアレルギーを除去する対応方法。

③兵庫県西宮市立上ヶ原小学校 発表事例
・市内全校で統一した食物アレルギー対応マニュアルが示されたことで、保護者、主治医、教職員、教育委員会、医療機関、所轄消防署等が相互に連携し、組織的な取組として進めている。
【西宮市 学校給食における食物アレルギー対応について】
https://www.nishi.or.jp/kosodate/kyoiku/gakkokyushoku/gakko-allergy.html

・除去食の対応は全校統一で、調理最終段階の卵のみ除去対応とする。

・西宮市教育委員会が開発した、献立作成と児童生徒のアレルゲン情報が連動した「西宮市献立作成・アレルゲン管理システム」を平成29年9月より全校で使用することで、誤食誤配防止に大きくつながった。

本分科会で上記3件の事例発表を聞き、文部科学省発行の学校給食における食物アレルギー対応指針に基づき、県や市での実情に合わせてマニュアルを作成することで、各校単独での対応ではなく、県内・市内で統一した対応が進められていることが分かりました。

現場の状況を知る栄養教諭が中核となり、保護者・学校・主治医・消防機関と連携をとりながら、一体となって安全を最優先とした取組が推進されている事例発表を聴講して、この数年の間で、非常に食物アレルギー対応のレベルが高くなったことを実感しました。

中野 はるか
上田 知佳 記