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関西の中学校給食の充実を願って

平成20年も新学期がはじまり、多くの新入生が学校生活に胸を膨らませていることと思います。 大阪で生まれ育った方は、学校給食といえば小学校までで、中学校はお弁当持参が当たり前といった認識の方が多いと思います。それもその筈で日本全国の中学校給食の実施率平均は総生徒数中74.8%(平成18年5月1日現在文部科学省調査)ですが、大阪府の中学校給食実施率は当初から低く平成18年現在で 9.4%、全国でも最下位です。関西で一番高い奈良県でさえ、53.2%にすぎません。

食育基本法の制定や栄養教諭制度が施行される中、関西でも公立中学校で給食を導入する自治体が相次いできており、はやばやと選挙マニュフェストに中学校給食の実施を揚げられた首長候補者も記憶に新しいところです。
しかし先日の新聞によると、このように導入され始めた中学校の給食ですが、生徒たちの人気は今ひとつで、利用率は当初考えていたより低いようです。そんな状況から、早々に休止したところもあるとの内容が掲載されていましたが、その理由として次のようなものがあげられていました。

①おかずが冷たい
②メニューが不満(逆に好きな献立しか選ばない)
③量が調整できない
④選択性なので早めに申込みをしないといけない

では、新たに導入されたこのような中学校給食とは、どんな内容なのでしょうか。それは生徒全員が学校や学校給食センターで調理された同じメニューの学校給食を一緒に食べるのではなくて、生徒が事前に民間の給食業者作成の献立を見て注文し、その受注分だけ調理して、学校に配送された弁当方式の給食として提供されているものでした。
すなわち栄養教諭・学校栄養職員による献立作成と指導のもと、よく吟味、厳選された食材を使って調理され、また食育の授業として生きる力を育むための食の重要性・食文化やマナーを学びながら生徒全員一緒に食べるいわゆるわれわれが認識している学校給食とはまったく違う内容のようです。

本来、学校教育の一環として位置付けられている学校給食は、単に一回の食事、食欲を満たすためだけのものではなく、学校や学校給食センターで、生産から調理まで大勢の人たちにより生徒一人一人への愛情を込めて作られた、いわば食事の教材といえるのですが上記ニュースのお弁当給食からは残念ながらこのような姿勢は伝わってきません。もっとも請負予算額からみれば、民間の製造業者にそれを望む方がどだい無理な話であって、学校給食の担っている意義の重さが価格と連動するのは、当たり前の事なのです。

学校給食の好ましい形の例として、首長、教育長、学校、父兄、住民全員が子ども達のために愛情いっぱいの学校給食を調理、提供して、校内暴力や犯罪が殆どなくなったという話がいくつかありますが、この例をみても、おいしい学校給食を通して子ども達は、大人が自分たちに心から愛情を注いでくれていることを実感して、心身がすこやかに育まれ、自然に立ち直れたのであって、みせかけの表面的な取組だけであれば反応しなかった筈です。
いつも中学校給食の導入議論には必ず財政的理由が挙げられますが、成長盛りの中学生が望ましい食習慣をしっかり身に付けて健康な成人になり、健全な社会を形成していくためには何が大切なのか、関係する人々の正しい認識が望まれます。目の前の利得のために「食育」を利用するのではなく、将来の大きな財産の育成に向けて理解が深まり、関西の中学校給食実施率が、子供達のために正しく充実した形で上昇することを、願うばかりです。