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『第65回全国学校給食研究協議大会』山口県で開催!

学校における食育の推進と学校給食関係者の資質の向上を図るため、山口県において、全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実~食から始まる子供の元気~』を主題として、研究討議が以下の内容で行われました。

1.大会概要

  1. 主題
    『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実』~食から始まる子供の元気~
  2. 趣旨
    学校における食育を推進する上で重要な役割を担う学校給食の在り方について研究協議を行い、併せて学校給食関係者の資質の向上を図る。
  3. 開催日
    平成26年11月20日(木)・21日(金)
  4. 開催地
    山口県山口市
  5. 主催
    文部科学省、山口県教育委員会、山口市教育委員会、全国学校給食会連合会、公益財団法人山口県学校給食会
  6. 後援
    山口県PTA連合会、山口県小学校長会、山口県中学校長会、山口県特別支援学校長会、山口県学校栄養士会、山口県学校給食共同調理場連絡協議会

2.全大会概要

  1. 文部科学省説明
    演題:「学校給食の役割と食育の推進」
    文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 課長 大路 正浩
  2. 実践発表
    発表題:「学校・家庭・地域が一体となって取り組む食育の推進 知ってみ~ね 食べみ~ね -食への意識の向上に向けて-」
    発表者:山口県美祢市教育委員会学校教育課 指導主事 野間 誓子
    山口県美祢市立秋吉小学校 栄養教諭 瀬脇 優子
  3. 特別講演
    演題:「世界に誇ろうニッポンの給食!こんなに違う、こんなに変わる給食事情」
    講師:菊田 あや子(タレント・リポーター)

    【文部科学大臣より表彰された方々】

 3.分科会

  1. 開催日
    平成25年11月21日(金)
  2. 各分科会と研究主題
    (1)学校給食を活用した家庭への食育の普及方策
    研究主題「学校給食を活用して家庭に食育を普及するためには、どのようにしたらよいか」
    (2)学校給食における地場産物等の活用方策
    研究主題「学校給食において、地場産物の活用及び米飯給食を推進するためには、どのようにしたらよいか」
    (3)小学校における食に関する指導
    研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
    (4)中学校における食に関する指導
    研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
    (5)児童生徒への個別的な対応指導
    研究主題「食物アレルギーや肥満、痩身及びスポーツを行う児童生徒への個別的な対応指導はどのようにしたらよいか」
    (6)おいしく魅力のある学校給食のための調理技術の向上
    研究主題「児童生徒の実態に基づく栄養管理や調理技術の向上を図り、栄養バランスのよいおいしい給食を提供するためには、どうしたらよいか」(7)特別支援学校の学校給食の在り方
    研究主題「児童生徒の障害に応じた学校給食を提供するためには、どのようにしたらよいか」
    (8)衛生管理の在り方、安全かつ安心な食材の選定方法
    研究主題「学校給食の施設・設備を改善し、衛生管理を徹底するためには、どのようにしたらよいか」
    「学校給食に、安全かつ安心な食材を安定的に供給するためには、どのようにしたらよいか」

4.大会参加者のまとめ

山口県において、全国から参加された学校給食関係者による真剣な討議が繰り広げられました。美祢市が中心となって行った食育の推進として「学校・家庭・地域が一体となって取り組む食育の推進知ってみ~ね 食べてみ~ね-食への意識の向上に向けて-」と題して実践発表がありましたのでご紹介いたします。

  1. 美祢市の食育推進体制
    山口県美祢市は栄養教諭、学校栄養職員が各4名ずつ配置され、学校関係者だけでなく、保護者・地域・生産者を結ぶ食育のネットワークが構築されている。
    食育を推進していくために下記3つの基盤を構築している。
    ・美祢市食育推進検討委員会・・・栄養教諭を中核とした食育推進事業

    ・学校給食栄養士部会・・・地場産物を活用した献立作成、料理教室の開催
    ・美祢市食育ネットワーク会議・・・学校・地域・関係機関が連携し食育を進める
  2. 美祢市の児童生徒の食生活の実態
    小中学生を対象としたアンケートや、教職員の研修会の協議等を通して、美祢市の食生活について2点課題が明らかになった。
    課題① 小中学生の朝食摂取率は比較的高いが、主食しか食べていない児童生徒が30%を超えている。朝食の内容を見直し栄養バランスの整ったものに改善していく必要がある。
    課題② 美祢市や山口県の郷土料理を「知らない」と答えた小学生が44%、中学生が28%いる。給食で地場産食材と郷土料理を紹介しているが、児童生徒は特に意識せずに食べている。
  3. 美祢市の食育プロジェクト
    上記の課題を受け、2つのプロジェクトを立ち上げ重点的に取り組んだ。
    (1)【プロジェクトⅠ】朝食の内容改善
    ①基本的な生活習慣の定着に向けた取組
    小学生から中学生に向けて給食時間や学級活動の時間等を活用し、朝食の働き・バランスのとれた朝食の必要性・脳力アップのための朝ごはんについて指導を行った。
    また、児童生徒が自らの生活習慣を振り返るために各校で作成した「チェックカード」と山口県教育委員会が作成した「『食事、運動・遊び、読書』90日元気手帳」を活用し啓発を行い、実施後の結果から、気になる児童生徒に対して個別指導を実施した。チェックカードと元気手帳は、実施後、家庭に持ち帰り保護者からの気づき・励ましの言葉をもらい家庭との連携につなげている。

    ②朝食をテーマにした親子料理教室の開催
    小学生を対象に「野菜もりもりぶちうま朝ごはん」と題して親子料理教室を開催した。保健センターの栄養士から朝食の重要性についての話も聞き、親子で朝食のバランスについて考える機会を得た。
    ③簡単朝食レシピの募集及び発刊と活用
    市内小中学校全家庭へ簡単にできる朝食レシピの募集を呼びかけた。
    107点の応募の中から厳選した27点のレシピを冊子としてまとめ、各学校の授業で調理講習会を行ったり、保護者会でレシピ紹介を行い児童生徒だけでなく保護者と連携しながら、朝食内容の改善について取組を行っている。
    (2)【プロジェクトⅡ】地場産物の活用
    ①地場産物を活用した市内統一献立の実施
    平成25年度に2回、美祢市内・山口県内でとれた食材を使った市内統一の「山口県産給食の日」を実施した。食材、生産者を紹介したリーフレットを作成し、全て美祢市産・山口県産であることを知った児童生徒は興味を示し、いつも以上に味わいながら食べていた。平成26年度は回数を年3回に増やし実施を計画している。
    ②関係機関、生産者との連携による産地見学と地場産物紹介ビデオの作成
    市内全ての児童生徒が産地見学を行う事は困難なため、JA山口美祢の協力を得て、地場産物の収穫までの様子、生産者へのインタビューを収録したDVDを作成し、市内の小中学校に配布した。給食時間・学級活動等の時間に視聴した。その他、生産者を学校へ招待し、生産者との交流給食を行ったり、地場産物について、話を聞く機会を設けた。直接生産者と関わることで、生産者や地場産物をより身近に感じるとともに食材への関心が非常に高まっている。
  4. 成果と課題
    成果①朝食の内容改善
    主食のみを食べている児童生徒は減少し、主食と主菜と副菜を食べている割合が増加した。朝食を摂ることの大切さを理解し、実践する児童生徒が増えたためと考えられる。
    また、保護者も巻き込んだ取組を多く設定したことにより、保護者の食への意識も高まってきたと思われる。
    成果②地場産物の活用
    自分の住んでいる地域や山口県の郷土料理を知っている割合が増加した。地場産物を活用した郷土料理への興味・関心が高まったからだと言える。
    地場産物の使用率も、全国で目指す数値が30%のところ、美祢市では64%と高い使用率を誇っている。生産者との交流をコーディネートすることで、児童生徒と生産者のつながりができ、JA山口美祢など関係機関との連携が深まった成果である。
    今後の課題として、生産者から提供される地場産食材の種類には限りがあるため、多様性に富んだ給食を提供していくために、調理方法を工夫していきたい。併せて、給食の献立に偏りが出ないよう新たに開発していくことを検討したい。
  5. 大会の感想
    本大会の研究発表や様々なプレゼンは、次のようなものでした。
    栄養教諭、学校栄養職員の方々が、小規模校のよさを最大限に生かし、幼保・小・中学校の縦のつながりと、学校間の横のつながりを大切にし、保護者や地域と連携した食育推進に奮闘しておられる様子。
    また地場産食材をよく児童生徒に理解させるために、生産者との距離が近いことを生かした交流を深めて、①地域全体の広い取組となり、②児童生徒のよりよい理解や関心にもつながり、そして③楽しく・理想的な食育が実践されることになる。
    このように中身の濃い食育推進の研究発表が今大会も数多く発信されていました。