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子どもの成長と健康増進に牛乳が果たす役割~Jミルク公表資料より、食品値上げの2015年春 改めて考える~

食生活の向上と、酪農、乳業の発展を目的とした団体Jミルクより、2015年4月「子どもの成長と健康増進に牛乳が果たす役割」が公表されました。

2015年春は様々な食品が値上げされ、牛乳乳製品の小売価格も値上げが始まりました。

また、昨年よりバター不足も深刻な状況となっており、今後とも減少傾向が続くと予想されており、それを受け、」国産牛乳乳製品の安全供給を図るため、様々な取組みが酪農現場で行われております。

この様な情勢の中、値上げに伴う買い控えと相まって、牛乳への否定的な言説の流布により、牛乳消費をめぐる不安や混乱を生じないために、本資料は、牛乳の栄養について、また、国産牛乳乳製品の安定供給に向けた取組みについて、紹介された資料となっており、以下に、その内容の要旨をご紹介します。

 

1.子どもの発育と牛乳栄養の効果・影響を考える

  1. 近年増加している中学生の骨折予防のために、小学生からのカルシウムの必要量摂取が重要
    近年子どもの骨折が増えており、特に中学生の骨折が、20年間で2倍に増加。主な理由は①運動不足、②日光不足、③カルシウム、ビタミンDの摂取不足。中学生の骨折を減らすためには、小学生のころからカルシウムを必要量を摂取しておくことが、中学生の骨折の予防につながる。

    【図1「加齢に伴う骨量の変化(腰椎)」】新潟医療福祉大学 塚原典子准教授 作成資料より

  2. 牛乳はカルシウムを効率的に摂取できる
    骨折予防には骨量(一定量の骨に含まれるカルシウム量)を増やすことが重要。カルシウムを多く含む食品としては、牛乳やしらす干し、さくらえび、小松菜などがあるが、1食で食べられる量で考えると、牛乳は1食分にあたる200mL中に227mgのカルシウムが含まれ、一定量のビタミンDも含有し、効率的に摂取できる。
  3. 子どもの成長に必要な栄養素をバランスよく含む
    小学生の1日あたり必要なビタミンAの推奨量に対し、牛乳200mLで約16%前後補給でき、舌・唇・皮膚や眼の健康に関係し、運動能力を高めるビタミンB2別名「成長ビタミン」は、ビタミンA以上に多く含まれおり、成長に必要な栄養素をバランスよく含んでいる。
  4. 小児期の牛乳摂取が将来の骨粗しょう症のリスクを軽減する
    女性は20歳~25歳、男性は25歳~30歳に骨量が最大になる「ピーク・ボーン・マス」を迎えるといわれている。男女ともにその後は骨量が減ることはあっても増えることは難しいため、ピーク・ボーン・マスまでに十分に骨量を蓄えることが重要。

上記以外に、アンチミルクの対策として、「牛乳の気になる噂を検証」と題し、以下4項目が解説されている。
噂1.牛乳を飲んでも背は伸びない → ×
噂2.日本人のほとんどは牛乳を飲むとおなかをこわす → ×
噂3.骨粗しょう症は牛乳をたくさん飲む欧米諸国に多い → ×
噂4.牛乳には女性ホルモン作用があり、乳がん、前立腺がんの最大の誘因である → ×

 

2.学校給食における牛乳の役割を考える

撮影協力:小平市立小平第六小学校

  1. 学校給食と牛乳導入の歴史
    1920(大正9)年には東京麹町小学校で、最初の牛乳給食が実施。戦後は、援助物資の脱脂粉乳を給食で提供。戦後の栄養バランスの良い食事に大きな役割を果たしたのは、牛乳乳製品であり、その普及に貢献したのは学校給食である。
  2. 現在の学校給食制度
    2008(平成20)年6月に改正された「学校給食法」では、「食育の推進」とともに、学校給食の目標として、「適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること」などが、新たに明記された。
    また、2013(平成25)年1月、文部科学省は、児童生徒の健康の増進及び食育の推進を図るために、1人1回当たりの望ましい栄養量(全国平均値)を算出した「学校給食摂取基準」の改正を告示し、同4月に施行している。
  3. 子どもの栄養事情と給食と牛乳の効果
    児童(小学校3年、5年、中学校2年の男女)の昼食における栄養素摂取量は、給食がある日が上回っている。ビタミン類は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCのいずれも、給食がある日に摂取量が多く、特にカルシウムは、給食から1日の必要量の40~60%をも摂取しており、給食時の牛乳がカルシウムの供給に大きく貢献している。

    【図2「カルシウム摂取量の比較(給食のある日とない日)」】
    (独)日本スポーツ振興センター「平成22年度児童生徒の食事状況等調査報告書」より

  4. 牛乳をより摂取する児童は骨量が高くなる
    完全給食もしくは、ミルク給食が実施されている学校の生徒の方が、給食未実施の学校の生徒よりも、骨量が高いという結果が出ている。また、小・中学生時に牛乳をより多く飲んでいる高校生の方が、骨量が多くなっている。

  5. 学校給食の牛乳から習慣的なカルシウムの摂取
    もし学校給食で牛乳が提供されなくなったとしたら、3人に2人がカルシウムの摂取不足になる可能性が高く、子どもたちは、学校給食の牛乳から習慣的にカルシウムを摂取している。

  6. “牛乳中止”への日本栄養士会と全国学校栄養士協議会の見解
    日本栄養士会は、学校給食での牛乳の提供中止は「慎重に考えるべき点が多い」とし、牛乳の中止は児童生徒に一層のカルシウム不足を招く恐れがあると、注意を喚起している。
    全国学校栄養士協議会は、「学校給食の目標から視点をずらしてはならない」とし、この議論に当事者である児童生徒や保護者の姿が見えないと述べている。

  7. 牛乳給食のニーズ-保護者の意識調査から-
    Jミルクが給食を利用する子どもの保護者を対象に実施した調査では、学校給食での牛乳廃止に対し、4人に3人(約72%)が「反対」と回答。学校給食に牛乳は必要と考える保護者は、多いといえる。

 

3.食品値上げ-牛乳の安定供給を考える-

  1. 牛乳の値上げの背景について
    牛乳乳製品の値上げの背景には、輸入による飼料費の高止まりによる生産コストの上昇のほか、適性価格での販売により、喫緊の課題である酪農経営を支え、長期的視点で安定的な国産牛乳を生産できる体制を整えていくことが背景にある。
  2. 牛乳の安定供給の意義
    日本で消費される牛乳は全量を国産牛乳から作っているが、チーズやバターなど乳製品は半分以上を輸入に頼っている。全世界で貿易される牛乳乳製品はわずか約9%であり、新興国での需要増が見込まれる中、世界的に乳製品のひっ迫をきたし、日本が今まで通り必要な量を輸入できなくなると危惧されており、自給率向上が課題である。
  3. 牛乳の優れた栄養とコストが日本人の食生活を支えている
    厚生労働省が毎年発表している「食品群別栄養素摂取量」(国民1人1日当たりの食事の中で、どの食品からどれだけ栄養素を摂取しているか)によれば、乳類(牛乳乳製品)は、栄養素摂取率がとても高い食品であることがわかる。
    また、牛乳は25年間、価格がほぼ変わらずに推移しており、価格の変化の少ない「物価の優等生」であり、コスト面でも「財布に優しい食品」であるといえる。
  4. 魅力ある都市酪農を目指して 東京都酪農業協同組合の紹介
    全国で酪農家が年々減少する中、都酪農においても1996年の発足時の酪農家数は約170戸だったが、2015年現在は51戸に減少している。東京都多摩地域を中心に都市近郊の特徴を活かし、酪農家が経営を続けていくために、支援に力を入れている。
  5. 輸入に頼らない酪農経営を目指して 千葉県 高秀牧場の紹介
    日本の酪農家は、円安や穀物価格の上昇に伴う輸入飼料の高騰が痛手となり、大きな危機に陥っている。こうした中、輸入飼料に依存せず、周囲の耕種農家や酪農家の協力により、三毛作を推進し、高秀牧場では、自給飼料率75%を実現。自給飼料の生産は、1996年から約20年地道に取り組んできた、牛の糞尿を農作物の堆肥として活用する仕組み「循環型酪農」の成果であり、耕種農家と酪農家の良い関係性を構築し、好循環が生まれている実情である。

 

上記内容から、あらためて、日々の食生活において牛乳乳製品が優良栄養食品であり、また牛乳は、子どもの成長に必要な栄養をバランスよく含み、習慣的にカルシウムを摂取することができるため、学校給食になくてはならない大切な食物(飲み物)であるということを、再確認することが出来ます。

そして、栄養面からもコスト面からも、日本人の食生活を支えている牛乳乳製品の安定供給・自給率向上のためにも、日本の酪農が継続され発展していくことは、重要なことであり、私たち消費者が適正な価格で売買されることの理解を深めることは、重要なことではないでしょうか。

本資料は、一般社団法人Jミルクのホームページより、ご覧頂けます。また、同様に成長期のこどもにとって牛乳・乳製品の果たす役割の重要性について公益財団法人学校給食研究改善協会の情報紙「すこやか情報便」17号で、発信されています。下記ホームページよりご覧ください。

「すこやか情報便17号」
「すこやか情報便」