2015.11.20
『第66回全国学校給食研究協議大会』高知県で開催!
学校における食育の推進と学校給食関係者の資質の向上を図るため、高知県において、全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実~食でつなげる未来の元気な子どもたち~』を主題として、研究討議が以下の内容で行われました。
1.大会概要
- 主題
『「生きる力」を育む食育の推進と学校給食の充実』~食でつなげる未来の元気な子どもたち~ - 趣旨
学校における食育を推進する上で重要な役割を担う学校給食の在り方について研究協議を行い、併せて学校給食関係者の資質の向上を図る。 - 開催日
平成27年11月5日(木)・6日(金) - 開催地
高知県高知市 - 主催
文部科学省、高知県教育委員会、高知市教育委員会、全国学校給食会連合会、公益財団法人高知県学校給食会
高知県市町村教育委員会連合会 - 後援
高知県小学校長会、高知県中学校長会、高知県特別支援学校長会、高知県学校栄養士会、
高知県学校給食共同調理場協議、高知県保幼小中高PTA連合体連絡協議会
2.全大会概要
- 文部科学省説明
演題:「食育の推進と学校給食をめぐる最近の動き」
・第3次 食育推進基本計画の策定に向けて 2016年5月より実施予定
・総務省「食育の推進に関する政策評価書」 2016年2月頃より実施予定
文部科学省初等中等教育局 健康教育・食育課 企画官 竹林 敏之 - 実践発表
発表題:「塩分摂取に着目した食生活習慣改善へのモデル検討」~スーパー食育スクールの取組から~
発表者:高知県香美市立大宮小学校 栄養教諭 大原 佐知、高知県香美市立大宮小学校 養護教諭 田中 牧 - 特別講演
演題:「釣りバカ浜ちゃんの「土佐流食育」のすすめ」
~高知の豊かな「食」を子どもたちの「生活技術」向上につなげよう~
講師:南国生活技術研究所 黒笹 慈幾
【文部科学大臣より表彰された方々】
3.分科会
- 開催日
平成27年11月6日(金) - 各分科会と研究主題
(1)学校給食を活用した家庭への食育の普及方策
研究主題「学校給食を活用して家庭に食育を普及するためには、どのようにしたらよいか」
(2)学校給食における地場産物等の活用方策
研究主題「学校給食において、地場産物の活用及び米飯給食を推進するためには、どのようにしたらよいか」
(3)小学校における食に関する指導
研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
(4)中学校における食に関する指導
研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
(5)児童生徒への個別的な対応指導
研究主題「食物アレルギーや肥満、痩身及びスポーツを行う児童生徒への個別的な対応指導はどのようにしたらよいか」
(6)おいしく魅力のある学校給食のための調理技術の向上
研究主題「児童生徒の実態に基づく栄養管理や調理技術の向上を図り、栄養バランスのよい美味しい給食を提供する
ためには、どうしたらよいか」
(7)特別支援学校の学校給食の在り方
研究主題「児童生徒の障害に応じた学校給食を提供するためには、どのようにしたらよいか」
(8)衛生管理の在り方、安全かつ安心な食材の選定方法
研究主題「学校給食の施設・設備を改善し、衛生管理を徹底するためには、どのようにしたらよいか」、
「学校給食に、安全かつ安心な食材を安定的に供給するためには、どのようにしたらよいか」
【高知家弁当 バランスの取れたとても美味しいお弁当】
4.大会参加者のまとめ
高知県において、全国から集まった先生方により真剣な討議が繰り広げられました。スーパー食育スクールの取組から「塩分摂取に着目した食生活習慣改善へのモデル検討」と題して、高知県香美市立大宮小学校の栄養教諭・養護教諭お二人の先生方より実践発表がありましたのでご紹介いたします。
- 地域・学校の実態
平成20年度香美市国保特定健診結果では、受療中の約67%が高血圧であった。生活習慣病予防のため、香美市として目標を立て、平成26年度は成人の高血圧対策を重点的に取り組んでいる。
学校においては、児童の生活リズムは、遅寝、遅起きの傾向があり、保護者の生活習慣が影響している。食事は大人と同じものを食べるなど、塩分等の過剰摂取が考えられるため、塩分摂取に着目し食生活習慣改善を取り組んでいる。 - 取組みの全体構想
実態から見えてきた課題を立て、目指す児童像・保護者像を設定した上で、「塩分摂取」と「食生活習慣」との関連を想定し、事業目標を決めて取り組んだ。
地域や学校・家庭のみならず、生産者や教育機関とも連携し、取組を進めた。 - 塩分摂取量の低下を目指した取組
①児童が自分の体の状態と食事との関係について学ぶ場の設定
・土佐塩の道保存会の方より、塩の道の歴史を学び、塩工場を見学。海水からの塩作りやかまぼこ作りに取り組んだ。
・だしの飲み比べや塩分濃度計を活用、味覚クイズを行う。また、減塩味噌汁作りやおやつの表示の見方などを学ぶ。
・日頃の塩分摂取量を数値化するため、高知大学医学部付属病院検査部との連携により、尿検査を実施。尿検査時の前々日、前日の2日間の食事調べも行った。
②親子で一緒に取り組むことができる健康的な食生活習慣改善へのモデルづくり
・塩分濃度測定や食品表示等を活用した塩分調べの定着。
・PTAと連携し、教育相談日に保護者を対象に減塩を意識した朝食メニューを提案。
③薄味でおいしく食べられる学校給食献立の開発
・学校給食における1食あたりの塩分量を平成25年度は平均2.9g、平成26年度は平均2.7g、平成27年度は平均2.5gと徐々に減らす。
・学校給食における地元食材の活用を増やし、家庭でも摂取頻度や量の向上を目指す。 -
成果
全校児童と保護者全員を対象に「食生活についてのアンケート」を実施し、一年間の味覚調査や食事調べの記録から意識の変容を見取った。
【学校】
・塩の大切さ、塩の使用の仕方、過剰摂取に対する知識について学習を深めた。
・減塩に対する意識が付き、必要な食品を選択する力を身に付けた。
・尿検査や食事調べの回数を重ねるごとに値が減少傾向に向かい、食生活の改善がみられた。
・学校給食の献立の塩分量の減少。徐々に減らすことで、児童に違和感なく薄味に慣れてもらい味覚を形成。
【家庭】
・児童自身が改善目標を計画し、実践するという「決める」「進める」「振り返る」視点を位置付けた。
・食生活習慣について家庭で話す機会の増加や保護者の減塩に対する意識の向上により、家庭の食事の塩分濃度測定値が減少。
・学校給食での地場産物の活用率が平成23年度から平成26年度までに28%上がり、家庭での野菜や果物の摂取頻度も向上。
学校・家庭さらに地域にも取組が広がることで、児童の健やかな心身の成長だけでなく、地域の健康づくりにも寄与し、地域活性化につながった。これからも学校・家庭・地域のつながりが更に密になるよう取組を継続し、食生活習慣改善モデルの普及を行っていく。 -
大会実践発表の感想
「児童自身が「決める」「進める」「振り返る」という視点で学習することにより、児童が自身のこととして学ぶ意欲の基盤を築くことができ、さらに学校・家庭・地域へと、この取組が広がって、塩分摂取量を抑えることができた。」
上記の実践発表から、児童の食事は親子一緒に取り組むことによって、単に一時的なものではなく、毎日の食事習慣として効果的に改善されるということがあらためて実証されました。
尿検査や塩分濃度計を活用した数値化、また塩工場の見学や減塩料理の調理実習など、目でみて体験し学ぶ場の設定は大変興味深い内容でした。そして、学校給食献立も一度に塩分量を減らすのではなく、徐々に減らすことで児童に違和感なく、おいしく食べることができ、薄味に慣れていく上で味覚の感受性を高められることもわかりました。
減塩への取組が、食材そのものに興味を持つようになるという発表内容は、基本的な食習慣改善にも繋がる非常に重いものでした。