2025.11.11
「第9回 栄養教諭食育研究大会」滋賀県 彦根市で開催!~エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して~
「エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して」と題し、子ども達への食育の取組の成果を体系的・継続的に推進していくために「第9回 栄養教諭食育研究大会」が、滋賀県彦根市で、以下の内容で開催されました。
大会概要
1.主題
エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して
2.開催日
2025年11月2日(日)
3.開催場所
ひこね市文化プラザ
4.特別講演(以下敬称略)
「栄養不良の二重負荷を乗り越えるための二重責務行動としての給食の考え方」
神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科 特任教授 饗場直美
5.論文研究発表(質疑応答含め 各15分)
・鹿児島県「学校における食育および栄養教諭による指導を受けた経験が短大生の食意識・実態に及ぼす影響」
発表者:栄養教諭 児玉むつみ
・広島県「給食の時間の実態と教員の意識・指導の実態」
発表者:栄養教諭 井上博子
・島根県「中学生の減塩に関する知識と意識・食行動の実態2」
発表者:栄養教諭 佐伯絵美
・福島県「福島県における栄養教諭による食育推進の変化」
発表者:栄養教諭 新妻祐美
・滋賀県「小学校における減塩指導による効果の継続性」
発表者:栄養教諭 藤原尚美
・滋賀県「児童への減塩指導における家庭の意識と波及効果」
発表者:栄養教諭 日高佐緒里
6.ポスター発表
静岡県「食事内容の実態把握とウェアラブル端末を活用した健康経営の取組について」
発表者:前静岡県袋井市教育委員会おいしい給食課係長 石塚浩司
※講評 神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科 特任教授 饗場直美先生
7.特別講演内容
神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科 特任教授 饗場直美
WHOは、すべての人を健康にしていくために、「肥満」と「低栄養」を同じ栄養不良として位置づけ、これら2つの栄養不良の二重負荷に対して、共に解決できる栄養の二重責務行動を起こすべきであると提案しています。そしてこの二重責務行動は、子ども達の発育・発達に対しての食や栄養に関する環境整備、政策、行動の項目からなる5つの行動が提案されており、その一つとして学校給食があげられています。
このことからも、栄養教諭として二重負荷を解決するために、子ども達の健全な発育・発達に寄与できる「栄養摂取を可能とした将来の健全な生活を維持するための食育」を継続することが非常に重要であります。
8.論文研究発表
6件の研究発表の中、減塩に関する2件について、ご報告いたします。
〇「中学生の減塩に関する知識と意識・食行動の実態2」では、保護者から生徒への減塩に関する声かけが、生徒の減塩に関する知識・意識・行動への意識につながっていた。この関連には男女差があり、男子よりも女子において関連がみられた。
〇「児童への減塩指導における家庭の意識と波及効果」では、学校で学習した内容を保護者に話している家庭の児童と話していない家庭の児童を比べると、話している家庭の児童の方が減塩に対する変容がみられた。
上記2件は、いずれも聴く、聴いてもらうという身近な人とのコミュニケーションが意識・行動と関連しており、とても興味深い内容でした。
講評では、「子ども達に対して栄養教諭が『食に関する指導』を行い、学校で学習した内容を子ども達が保護者へ話すことで保護者の意識を変えることにつながり、この行動を促すことが子ども達の健全な食習慣につながり、ひいてはすべての人を健康にしていくことにつながります。すなわち、子どもから保護者に伝えることの効果が最も大きいということです。」と述べられました。
9.ポスター発表内容
企業における「健康経営」の重要性が増すなか、従業員の健康管理を経営戦略の一部として捉える動きが加速している。従業員の栄養調査の結果、特に食塩の過剰摂取、野菜や果物の不足、ビタミン・ミネラルの偏りが顕著であった。個人の努力だけでなく、職場全体の食支援や栄養教育、生活習慣の改善に向けた仕組みづくりが重要である。
10.大会に参加して
本研究大会はこれまで、エビデンスを創出できる栄養教諭を目指して主に岐阜県多治見市で開催されておりましたが、今年第9回となる栄養教諭食育研究大会は11月2日(日)に、滋賀県彦根市で開催されました。当日は全国各地から参集され、データで示された幅広い分野における興味深い研究論文やポスター発表、情報交換などが行われて、充実した内容の研究大会でありました。レベルの高い発表を数多く見聞し、非常に有意義な一日となりました。
論文研究発表におきましては、栄養教諭・学校栄養職員の方々による子ども達への科学的根拠に基づいた「食に関する指導」が、子ども達の食に対する意識や行動につながり、この「食育」が創出されたエビデンスの裏付けによる指導であるからこそ、家庭にもそして社会的にもしっかり認められ、将来の健康にも大きな役割を果たす、ということを実感し学ばせて頂きました。詳細に亘るデータ解析・分析等々を熟(こな)され、更にきめ細かい考察を経て貴重な結論に至られた先生方のご研究とご発表に、心から敬意を表しております。
講演・発表を聴講し、私自身子どもを持つ保護者としてこれからは家庭で、子どもに声かけを行い、学校で学習した内容を子どもから聴くことで、家庭全体で食に関する知識・意識を高めたいと強く思いました。
上田知佳 記
※栄養教諭食育研究会ホームページアドレス
https://eiyokyoyu.jp/
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