2013.11.22
『第64回全国学校給食研究協議大会』三重県で開催!
20年に1度の式年遷宮の主要行事が一段落した伊勢神宮のある三重県において、全国から学校給食関係者が参加し、2日間にわたり『「生きる力」をはぐくむ食育の推進と学校給食の充実~学んで食べて、心も体も健康に~』を主題として、研究討議が以下の内容で行われました。
1.大会概要
- 主題
『「生きる力」をはぐくむ食育の推進と学校給食の充実』~学んで食べて、心も体も健康に~ - 趣旨
学校における食育を推進する上で重要な役割を担う学校給食の在り方について研究協議を行い、併せて学校給食関係者の資質の向上を図る。 - 開催日
平成25年10月31日(木)・11月1日(金) - 開催場所
三重県総合文化センター - 主催
文部科学省、三重県教育委員会、津市教育委員会、全国学校給食会連合会、公益財団法人三重県学校給食会 - 後援
三重県小中学校長会、三重県立特別支援学校校長会、三重県栄養教諭・学校栄養職員協議会、三重県PTA連合会
2.全大会概要
- 文部科学省説明
演題:「学校給食の役割と食育の推進について」
文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 課長/大路 正浩 - 実践発表
発表題:「健やかな心と身体つくる食育の推進」
~松阪市の特色をいかし、児童生徒を主体として保護者・地域とともに育む実践を通じて~
発表者:
松坂市松江小学校 校長/松本 吉弘
松阪市立飯南中学校 栄養教諭/奥田 加奈
松坂市教育委員会給食管理課 係長/横田 はるみ - 特別講演
演題:「食を通して、人を育てる」
講師:三重県立相可高等学校食物調理科 専任教諭 /村林 新吾
3.分科会
- 開催日
平成25年11月1日(金) - 各分科会と研究主題
(1)学校給食を活用した家庭への食育の普及方策
研究主題「学校給食を活用して家庭に食育を普及するためには、どのようにしたらよいか」
(2)学校給食における地場産物等の活用方策
研究主題「学校給食において、地場産物の活用及び米飯給食を推進するためには、どのようにしたらよいか」
(3)小学校における食に関する指導
研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
(4)中学校における食に関する指導
研究主題「生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための学校における食育の推進はどのようにしたらよいか」
(5)児童生徒への個別的な対応指導
研究主題「食物アレルギーや肥満、痩身及びスポーツを行う児童生徒への個別的な対応指導はどのようにしたらよいか」
(6)おいしく魅力のある学校給食のための献立作成や調理技術の向上
研究主題
「児童生徒の実態に基づく栄養管理や調理技術の向上を図り、栄養バランスのより美味しい給食を提供するためにはどうしたらよいか」(7)特別支援学校の学校給食の在り方
研究主題「児童生徒の障害に応じた学校給食を提供するためには、どのようにしたらよいか」
(8)衛生管理の在り方、安全かつ安心な食材の選定方法
研究主題
「学校給食の施設・設備を改善し、衛生管理を徹底するためには、どのようにしたらよいか」
「学校給食に、安全かつ安心な食材を安定的に供給するためには、どのようにしたらよいか」
4.大会参加者のまとめ
松阪市の特色を生かした食育を実践し、児童を主体とし保護者・地域と連携をとり、市全体として取組まれた工夫と努力が伝わってくる実践発表がありました。下記に、ご紹介します。
1)松阪市概要
(1)平成17年:7中学校、給食未実施、平成25年:小中学校、完全給食実施
(2)14人の栄養教諭と3人の学校栄養補助員が配置
(3)外国籍(主にフィリピン)生徒が、年々増加
2)食生活の実態調査結果
(1)中学生になると、朝食欠食率の増加傾向
(2)野菜や魚の給食残数が多い傾向
(3)成人も、野菜の摂取量が少ない
3)食育推進目標
(1)食に関する指導の充実
(2)栄養教諭等による食育の授業研究の実施
(3)地産地消の推進
(4)食物アレルギーを有する子どもたちへの対応
(5)家庭と連携した食育の推進
4)目標に対する具体的取組、成果、課題
【市内栄養教諭・学校栄養職員会議にて決定した以下4項目に重点をおき、取組んでいる】
- 地場産物を活用
取組① 「松阪牛」を題材とし、生産者や衛生検査所の獣医から話を聞く機会を設けた
取組② 社会見学では、給食の牛の納入店で枝肉から精肉になる解体作業の見学
取組③ 「松阪牛」「松阪赤菜」を使用した給食を実施
成果① 地場産物を活用した給食の定着
成果② 生産・流通・調理に関わる多くの人々の思いや努力を知り、命をいただくという感謝の心を育むことができた - 教科と連携
取組① 給食時に栄養教諭よりみそ汁の「だし」について説明し、家庭科で「ご飯とみそ汁」作りに挑戦
取組② 生活科で、豆について栄養教諭が指導し、農家の方からも話を伺い、実際にさやを取り、給食で味わう
成果① 日本の食文化の知識が深まった
成果② 教科のねらいと食育の視点から理解を深め、家庭と連携した指導を実施できた
課 題 今後は栄養教諭がどのように授業に関わっていくか十分協議する必要があるため、発達段階に応じた内容等・授業記録を次年度以降に引き継いでいくなどの工夫が必要。 - 朝食摂取や生活習慣改善
取組① 毎年1年生とその保護者を対象に「朝ごはん」を題材として、指導と給食試食会を実施
取組② 学級委員と担任の劇で、親子で「朝ごはん」の大切さを学習
取組③ 上記②を踏まえ、栄養教諭より朝食時の野菜摂取と食事内容の充実について指導
成 果 生徒だけでは無く、保護者にも重要性を伝えることができた
課 題 朝食欠食の生徒数は少数だが、引き続き、生徒自らが食事について考え、充実が図れるよう取組んでいかなければならない - 多文化共生の視点にたち、国際理解を深める取組
【外国籍児童(主にフィリピン)が19人在籍する学校で取組実施】
取組① 外国文化を知るために、まずは授業で、フィリピンの文化について学習を実施
取組② 食べる体験より、外国文化の違い・良さに触れてもらうため、フィリピン籍児童保護者を招き、母国家庭料理の調理実習を実施
取組③ 給食献立にも、フィリピン料理を取入れ、学習内容を発表・廊下への掲示を実施
成果① 「食」を通して、コミュニケーションを積極的に行うことができた
成果② 母国の料理を皆で「おいしい」と共有することで、外国籍の生徒が自信や誇りをもって友だちと関わる機会を設けられた
5)大会の感想
栄養教諭は、単発に行う授業だけではなく、担任や教科担当とともに連携して食育指導を展開し、さらに学校内にとどまらず、保護者や地域とともに全児童の食育推進のために奮闘しておられる取組の様子がよく理解できました。
このように幅広く連携を広げる食育指導は、長期的な計画と根気のいる作業の連続であり、これを継続していくことが児童の「生きる力」をはぐくむ大切な過程であると改めて実感しました。